イラストSS

　しんしんと降り積もる雪のなか、男はただ灯りを見つめ続けていた。
　今日はシャイネンナハト。争いの起こらない日。

　精霊種となって、長年シャイネンナハトの日は灯りを見つめ続けている。
　シャイネンナハトを祝う灯りの一つ一つが愛おしい。

　——あの灯りは友達で遊んでいる灯り。
　——あの灯りは恋人が仲を深めている灯り。
　——あの灯りは家族がわいわいと食事に興じる灯り。

　なんてことのない日常。それを大切にできる、そんな日。

　この日だけは縁を切らなくても済む。
　この日だけは血を見なくて済む。
　この日だけは使命もお休み。

　——俺が因習のような『全てを切る』という使命を忘れられる日。

　決して使命を嫌っているわけではない。己の使命は人にとって大切なことであることを知っている。悪縁もある。縁が別れることは悪いことだけではない。
　だけれども、刀であるが故に、運命（いのち）を切ることもある。自我が宿った以上、それを決めるのは己だ。
　でも、今日だけは一年でたった一日の休息日だ。そんな日は《別れるもの》が人々の幸せな縁が結ばれることを願ってもいいじゃないか。なぁ、聖女様、そう思うだろう？


　＊SS担当者：綴NM