PandoraPartyProject

イラスト詳細

忘れ去られし想い出

作者 磯島 まちこ
人物 エルシア・クレンオータ
イラスト種別 関係者1人+PCピンナップクリスマス2020(→おまけイラスト)(サイズアップ)
登録されているアルバム
納品日 2020年12月24日

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イラストSS

「お母様、今日はケーキがあるのでしょう?」
「そうね、エルシア。けれどその前に、支度を全て終わらせてからですよ」
 ソファに寝転び、お母様の膝に顔を乗せる。全く、なんて言いながらもお母様は自分が巻いていたストールを私にと掛けてくれた。
 ファルカウの種から生まれた木をツリーにして、飾り付けて。最後の星を乗せれば終わりだけれど、ケーキが待ち切れなくなってしまった。
 お母様の作るケーキは美味しくて、一切れだけと言われてももう一つなんてねだってしまって。それで、それで――?
「……ん」
 冬の遅い日差しが、エルシアを微睡みから呼び起こす。ふと、自分の頬が濡れている事に気付く。
 悪夢でも見ていたのだろうか――否、違う。夢の内容は思い出せないけれど、この涙は恐怖でも悲しみでもない。だってこんなにも胸が締め付けられて――それでいて、酷く暖かいのだから。
「懐かしい夢、でしょうか……」
 ふるふると頭を振り、洗面台へと向かう。涙の跡も、洗い流してしまおう。だって――
 ――色褪せた夢は、今は遠く。色褪せぬ夢は、写真の中にしか無く。
 忘却の母は、夏の夢の終わりに燃えてしまったから。
 だからこの夢は、忘れ去られた想い出にしか過ぎない。


 *SS担当者:飯酒盃おさけNM

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