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ティスル ティルの彁によるおまけイラスト
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「本当だって! ぼく、見たんだ! サンタさんを見たんだ!」
それは冬の、なんてことないおとぎ話だ。
シャイネン・ナハトの夜に良い子のもとへと現れる祝福(プレンゼンター)の存在は、どこの世界でも変わらない。それは、或いは子供を善行に走らせる為の親の口八丁でしかないのだが――今宵に限っては、ちょっと違う。少年は本当にサンタを見たのだ。
「お……っと。起こしちまったかな」
「サンディ君、静かに静かに……!」
その夜、少年は多くの子供と同じようにサンタの顔を見ようと待ち構え、いつの間にか眠ってしまっていた。目を覚ました彼の前に現れたのは、男女一組のサンタ……だろうか。
男性の方はその身ひとつで2階の窓の前に立ち、もうひとりは背中の白翼を震わせている。宛ら天使のようだ。
「いい子にしてたか? じゃあ、この話も秘密だぜ」
「騒いじゃだめだよ? 静かにできるわよね?」
小声で2人にそう告げられ、少年はこくこくと首を縦に振る。直後、青年――サンディから渡された箱を後生大事に抱えた彼は、天使の女性――ティスルへと深々とお辞儀をしていた。
上げた顔の先に、2人の姿はなく。少年の口に戸が立てられぬのも、常である。
「それでサンディ君、あと何件?」
「えーっと……ざっと10件くらい……」
「なんとかなる……わよね? 頑張りましょっか」
今夜は争いもない佳き日だから。
2人の依頼人が玩具屋だとか、そういう話は――深々と降る雪の下にしまっておこう。
*SS担当者:ふみのGM