イラストSS

●巡聖
「お巡りさん、こんばんは！」
　冬仕様の暖かな軍服を着込み、雪化粧のシャイネンナハトの街を軍靴で踏みしめ巡回するヴェルグリーズに、少年が駆け寄って来る。ヴェルグリーズも「こんばんは」と答え、親を探せば遥か後方から大きな荷物を持った男女が駆けてくる。屹度この子の両親だろう。
「サンタにプレゼントはお願いしたかい？」
「うんっ！　僕、パズルを頼んだんだ！」
「パズルか、キミは頭が良いんだね」
「ううん……妹がずっと病院に入院してて、暇だって言うから」
　健気なことに、この少年は妹の為に自分のプレゼントの権利を譲ろうというのだ。ヴェルグリーズは思わず「偉いね」と呟けば、はにかむ少年。そこへやっと両親と思われる男女が白い息を切らせて到着した。
「お巡りさん！　お手数おかけしました」
「いえ、俺はなにも」
　ふと目のあった母親へ、帽子を持ち上げ軽く挨拶を交わす。柔らかな微笑みは少年の立派な志へ向けてか。それともこれから気付かれないよう仕込みを入れる両親への苦労を感じてか。
「今夜もぼちぼち降りそうだ。暖かくして寝るんだよ」
「はーい！」
　ヴェルグリーズの言葉を素直に受け入れた少年は、両親を引っ張って家路へと向かった――。


　＊SS担当者：まなづる牡丹NM