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良いか、こういう場では殿方はまず堂々とすることがじゃな……
良いか、こういう場では殿方はまず堂々とすることがじゃな……
イラストSS
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「……クレマァダさんには本当、頭が上がらねえな」
「そうじゃろうな。先ほども我のドレスを踏みかけたし」
フロックコートを着るプラックの(焦点が若干ブレてる)瞳を心配そうに覗き込みつつ、ドレスを纏ったクレマァダはため息を吐いた。
――つい先日。『然る伝説』を元とした演劇に招待されたクレマァダは、折角だからと知人であるプラックを誘った。
安請け合いしたプラックは、のちに行く場所が混沌の中でも有数の劇場と知ってから、彼女にドレスコードやエスコート等の助言をひたすら受けた結果、漸く現在に至る。
「……あの時も、クレマァダさんに叱られてよ」
――我(カタラァナ)は死んだ。もう話さぬ! 笑わぬ! 歌わぬ! 先ずそれを認めよ!!
戦友の死に打ちひしがれたプラックを叱咤したクレマァダの言葉を思い出しながら、ホールに向かう彼は、ふとクレマァダに問いかける。
「今の俺たちは、あの時より前に進めているよな?」
「さてな。ただ……少なくとも。未来に背を向けては、おらぬだろうよ」
その返答に笑い合った二人は、そうして開け放たれたホールに足を踏み入れた。
――『絶望の青』が『悠久の青』に変わるまでの伝説。それを描いた演劇が催されるまで、あと少し。
*SS担当者:田辺正彦GM