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イラスト詳細

ジェック・アーロンのスミス21による3人ピンナップクリスマス2020(横)

作者 スミス21
人物 ジェック・アーロン
伊達 千尋
ベネディクト=レベンディス=マナガルム
イラスト種別 3人ピンナップクリスマス2020(サイズアップ)
納品日 2020年12月24日

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イラストSS

●The burnt-out ends of smoky days.

 冬の日暮れの茜や薄明を押し退けて、訪れた夜を一つの赤い光が照らし出す。

 篝火――申し合わせた訳でも無く野良猫が屯ろする様に集ったみっつの姿が、火の立ち上る穴ぼこだらけのドラム缶を取り囲んで、代わる代わる廃木だとか、其処ら辺に投げ捨てられた聖書や何処かの誰かのニュースを報せる新聞紙だとかを焼べて。

 パチパチと小気味良い音を立てて爆ぜる火の粉が、ぽっかり空いた屋根の向こうに見える星空を目指して、或いは行く宛も無く彷徨って、夜陰に朧だったみっつに温い橙で輪郭を与え人の姿形を象るのだ。

 ――一つは、ガスマスクを携えた酷く華奢なセーラー服の少女。

 ――一つは、引き締った軀に乗った勝ち気そうな笑顔が良く似合う青年。

 ――一つは、物語の中から出て来た王子様と称しても遜色無い甲冑の男。

 誰もかもに統一性が無く、繋がりを想起するのは難しいであろう。然し、彼等は『友達』である。数奇な運命の元、ひゅうひゅうと隙間風の冷たい此の廃工場で巡り合った――取り留めも無い会話で笑い合う事が出来る『友達』。

 噴き上げる灼熱は青年に取っては目印だ。此処に居る事を証明する、或いは――誰かのテリトリーである事を知らしめる。火とは、非常に原初的であり、文化の象徴であり、そして人を人たらしめるに至った重要なプロセスの一つでもある。

 だからだろうか。三人共、火が好きだった。生まれも育ちも、況してや『世界』すら違っても、火は誰もの歴史に密接するものだった。破壊するのも、戦禍による心に刻まれた傷痕にも、其れは根差して居た。


 『何かさ、ほら、めでたい事しようぜ』――そうして青年が取り出したのはマシュマロとクッキー、チョコレートを数欠片。マシュマロを串に刺して篝火で焼き始めれば少女が『溶けて消えて終わないか』なんてはらはらするのが可笑しくて。

 そうして、其の熱でチョコレートを溶かす様にして二枚のクッキーで挟めばスモアの完成。紙パックのオレンジ・ジュースと共に頬張れば『some more!』と声を挙げたくなる様な心地に全員顔がゆるゆると綻んだ。

「ネ、アタシもう一個食べたいナ」

「おう! 食え食え、ジェックはもっと太れ。べーやんは?」

「……三つ、かな?」

「行くねぇ! じゃあ俺、僭越乍ら音頭とか取っちゃうよ」


 ――『輝かんばかりの、此の夜に! ってね』


 *SS担当者:しらね葵NM

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