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三十一夜の物語
三十一夜の物語
イラストSS
シャイネンナハトの一か月前に、武器商人からリリコへ送られたのはアドベントカレンダーだった。
小さな引き出しにはキャンディがひとつ。包み紙には物語の断片。キャンディを口に含み、読み終わる頃に残るのは後味。
切なくも温かいレモン、心躍り夢広がるストロベリー、ほんのり苦いコーヒー。どの物語もリリコを魅了してたまらなかったから、もうひとつと伸ばした手を自分で抑え、リリコは当日を待った。
「やァやァ、リリコ。よく我慢できたね。それでは最後の扉を開けよう」
やってきた武器商人はリリコを膝に乗せ、隅の引き出しへ手をかけた。
「「オープンセサミ」」
ふたりで開けた最後の引き出し、中からは白いキャンディの包みがころん。
「……何も書かれていないわ」
「そんなことはないよ。今までのモノガタリを思い出してごらん」
リリコはましろいキャンディを口に入れ、記憶を手繰っていった。うっすらと眠気が降り積もり、いつしかリリコは夢の中。
「どんなモノガタリを紡いだのだろうねリリコは。もっとも御伽噺の結末は、めでたしめでたしと相場が決まっているけれどね」
輝かんばかりのこの夜に、溶けていくあまいあまいミルクキャンディ。
*SS担当者:赤白みどりGM