イラストSS

「一曲、踊っていただけますか？」
「私の気が済むまで、ならいいです」

　シャイネン・ナハト。輝かんばかりのこの夜に催された舞踏会は、紳士淑女で賑わっていた。
　友と、恋人と、身内と。和やかに語り合っていた人々は、ダンスホールに咲いた白い花に目を奪われる。
　彼女の装いはマーメイドラインのドレスに青い耳飾り、それに前髪を編み込んだだけのシンプルなもの。しかし楚々としたたたずまいと口元に浮かぶ微笑が、皆の心を引きつけて放さない。
　彼女の名はコスモ――それを知るのは、気障な仕草で正面にひざまずく男だけ。漆黒のタキシード姿で現れたフォークロアは、コスモの手を取って口づける。それはまるで一幅の絵画のような光景だった。

　演奏に乗ってゆらり、ゆらりと。広いダンスホールに白と黒の姿が舞う。人々は二人に見惚れて――こそこそと怪しい動きをする何人かに気づかなかった。
（これでいいのでしょうか……？）
（いいですよ。向こうの班も順調です）
　二人は身を寄せ合ってひそひそと内緒話をする。
　シャイネン・ナハト。輝かんばかりのこの夜に――囮の仕事に励む二人に幸あれ。


　＊SS担当者：乃科GM