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静謐なれど和やかに
静謐なれど和やかに
イラストSS
カチャリ、と食器が金属に触れる音が静寂に響く。静謐とした空気は一見して厳粛な印象を与えるが、その実個室に二人きりの彼等の表情は明るい。
「それでね、お師匠ったらね」
「それはまた強烈なエピソードだね」
絶えぬ笑顔と話題。アリアの話題にBinahの苦笑。
「そうだね、元の世界だと……」
「すごーい! 見てみたいなあ」
binahの来歴に目を輝かせるアリア。その輝きは、彼方に見える夜景より眩く。
(……)
つい目を奪われてしまった。なんて気障なことは言えない。だから
「どうしたの?」
と尋ねられてしまうと反射的に
「ううん、何でもないよ」
と返してしまうのだ。
豊穣で出会い、一緒の依頼を重ね、時に危険な任務にも共に立った。
そうして培った時は距離を確実に埋めたが、それでも0にするには時間が足りない。
けれど、Binahもアリアもなんとなくだけど理解している。こうやって積み重ねていく「なんでもない」がいずれ何か別の形に変容する、と。
その過程を、深い味わいのある料理のようにゆっくりと堪能すればいい。
食事が終わり、雑談に興じる夜。あっという間にすぎる時間。
空になったワイングラスが映すのは、一欠片の曇りもない笑顔に彩られた一組の男女。
*SS担当者:澪NM