イラストSS

●光の雨の中
二人のシャイネンナハトは雨だった。
それもまた良い、と告げたのはどちらだったか。
こうしてひとつの傘に、ふたりで入れば。より近くで寄り添っていられるから。
特別大きくもないビニール傘では、胡蝶の羽根は収まらないし、灰狼の長身も収まりきらないのだが。


嗚呼。でも、ほら。
街を歩けば、冷たい雨ばかりではない。
ビニール傘越しの、雨粒越しの。温かい光の雨が、眩い程に降り注いで。
暗い夜には、その光が愛する貴方を縁取ってくれる。
この光の雨は、何と温かくて。
見つめる貴方の視線は、何と熱いのだろう。


その熱に、近付きたい。
その奇跡に、触れたい。
灰狼が胡蝶の細い顎に指を添わせれば、胡蝶は精一杯爪先を立てた。
この冬の雨夜でも、貴方の頬は。貴方の指は。これほどまでに熱いなんて。


――触れる。


まるで、燃え散る火花。水溜まりで飛び散る雨粒。乱反射する光。
ただの刹那、触れた場所から想いが弾けて、あらゆる感情が流れ込んできた。
恋情、愛情、欲望、献身――言葉にすれば陳腐になってしまいそうな、衝動に近いもの達。


今は、ただ。
何も言わずに、この刹那の永遠を――感じたい。


　＊SS担当者：仄香みりんNM