イラストSS

　――シャイネンナハト、輝かしい夜よ。

　暗がりの部屋。静かなその空間に二人男女は居た。
　そこは用立てられた秘密の部屋。シャイネンナハトという特別な夜に、この逢瀬をする為に手配された部屋。
　街の喧騒から遠く離れ、此処だけが別世界であるかの様に空気の違う場であるが――確かに、此処もまたこの夜を祝す為の場なのであった。

「ふぅ、上物のワインを手に入れられて運が、良かった」
「はい。本当に。この場を用意出来て良かったです」

　この夜を祝うに相応しい、スーツ姿の青年アレフ。
　聖職者の様な装いをした女性、アリシス。
　二人は共に顔に微笑みを浮かべながらその様に談話を続けている。
　穏やかなその時間。或いはそれだけを見れば二人の関係をこの聖夜にありきたりな物の様に思うかもしれない。
　――が、見る者が見れば、その二人の関係はきっと一言では言い表せない程の複雑な関係であると見て取れただろう。
　この輝かしい夜に、暫くの時を経た青年の帰還と二人の再開に。
　或いは、二人の心情を思えば極上のワインも、誰の邪魔も入らぬこの空間も足りるとは言い切れないのかもしれない。

　だが、それでも。
　時間はまだある。焦る必要はない。
　今はこの瞬間を、万感の思いと共に。

　――“乾杯”


　＊SS担当者：黒矢NM