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二人の温もり
二人の温もり
イラストSS
夜が明けるか明けないかという時刻。窓の外を白い小さな塊が舞うように落ちてゆく。
雪だ。と言ったのは果たしてどちらが先だったのか。
気づけばアイラは飲みかけの温かなカップ一つを手に持って、導かれるように外に出ていた。
「きれい……」
遠くから差し込む朝の光に、振り始めた白い雪が反射して宝石のようにきらきら輝きながら落ちてゆく。
冷えた空気が全身を包み、弱い風が頬を撫でるが気にならない。
「アイラ、そのままだと体を冷やしてしまうよ?」
「あ、ごめんなさい」
すぐに中へ、と振り向こうとしたアイラをふわりと何かが包む。
赤いブランケットのぬくもりと誰よりもよく知る愛おしい人、ラピスの体温。
眺めるなら暖かい格好で、というようにアイラに寄り添いながらラピスもまた外へと視線を向ける。
「綺麗だね」
「そうですね」
二人の間に言葉は少ない。だがそれでも問題はなかった。
必要があれば煌めく蝶が想いを伝えてくれることをラピスは知っていたし、そばにいるぬくもりが言葉よりもはっきりと想いを伝えてくれていたから。
視線をアイラに戻して愛おしげにラピスは微笑む。
「ね、アイラ」
耳元の二匹の蝶が再会を喜ぶように揺れた。
*SS担当者:心音マリNM