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伊達 千尋のsimaによる2人ピンナップクリスマス2020(横)
伊達 千尋のsimaによる2人ピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
ふたつ分の寝息によって、部屋は静穏な空気で満ちていた。
一頻り飲んで、めいっぱい食べて、たくさん笑って、気が済むまで遊んだのが嘘みたいな静けさだ。
野の美を映した寿の緑色も、大地の逞しさを宿した千尋の茶色も、お互い窺い知ること叶わない。常であればよく知る色彩だが、今は閉ざされている。まるで遊び疲れた幼子のように、気の置けない相手の隣で浮かべるふたつの面差しは『安心』で幾重にもくるまれていた。
そんな中、炬燵の魔法で火照る寿の頬に畳の痕がつかないのは、千尋のおかげだ。寿がぬくぬくと身を預けた腕は、安眠へ誘う枕となってここに在る。もちろん千尋にとっても腕に感ずる温かな重み、指に触れるなめらかな髪の触感――すべてが確かに此処に在るもので、確かに此処で息衝いている。
涙で洗ったかのような美しい睫毛へ吐息がかかろうと、寿は目覚めない。
自分のものとは異なる鼓動が腕から伝おうとも、千尋は目覚めない。
満たされた胃袋同様、充たされた心地で横たわるばかりだ。
この距離感を、どう言葉にしたら良いのか。
それすら二人を思い悩ませる種に成りはせず、ただただ安らかな眠りが続く。
*SS担当者:棟方ろかGM