イラストSS

　その二人、赭き衣を纏いて白銀の野に降り立った。
　寂しく悪事に耽る賊と邂逅した二人は、堂々たる一撃を贈る。
「ほらほら、もっとプレゼントを欲しがってもらわないと！」
　艶やかな髪色へ、相手の灯りがぼんやり這う。けれど敵が朋子の目線を覚るより早く、赭き衣の配達人は地を蹴った。真白き袋にたくさんの夢（おたから）と希望（ぶき）を詰め込んで、闇夜を駆けた朋子の強打は、スパコーンという祝いの音と共に賊の一味を騒然とさせる。
　吹き飛ばされた男が雪原へ冴えない跡を残す一方、もうひとりの赭き使者――リズリーもまた、山のように詰まれたプレゼント袋の山を踏み付けて、不敵な笑みを唇へ刷く。
「歯ごたえがないね、そんなんじゃ、せっかくのシャイネンナハトがぼやけるってもんだよ」
　今にも踵で敵の顔を踏みしだきそうな雰囲気を纏い、リズリーは言い放つ。そしてこう続けた。
「さあ、アタシらと忘れられない夜を！」
「過ごしてもらうよ！」
　リズリーに朋子も言葉を連ねる。敵が胆を裂くような後悔を覚えようと、もう遅い。
　略奪に相応しき清らかな夜。ヴィーザル地方を粧う雪の野に、幾つもの悲鳴が虚しく埋もれていった。


　＊SS担当者：棟方ろかGM