イラストSS

　ああ、まただ。
　彼女は蠱惑的な笑みの中に憂いと寂しさを交えたガーネットを煌めかせた。
　シャイネンナハトに誘惑される、なんて浮かれていた俺が悪いのだ。
　温もり宿した蝋燭の炎が彼女の艶やかな四肢を照らし出し、豊満な胸を、小さく震える肩を映し出す。
　聖夜の脅迫に滲んだ憂いの色香。
　俺に馬乗りになった彼女は、もう一度深く、俺に体重をかけなおす。
　はぁ、と彼女の口から得も言われぬ吐息が零れた。
　口元を隠すように掛かった薄いベールの下、唇がきゅっと結ばれていて。
　俺は思わず手を伸ばした。
　躊躇うように振り払われたその手は、スプリングの軋むベッドの上に落ちていく。
　
　歳幼い彼女に俺の始末をつけさせるのは、心苦しいけれど。
「どうか、笑って」
　困ったように寄せられた眉根。瞬きも僅か二回の内に解けていく。
　悲し気で。辛そうで。
　そんな顔が、嘘だったかのように。先程までの意地悪な顔に戻っていく。
「ワタクシは。他者の不幸が、最も幸せなのです」
　傍らのナイフ。銀の刃。
　彼女の声は震えていたような気がした。

　視界の淵に佇むスーツ姿の男が、口元を歪めて彼女に何かを囁いた――


　＊SS担当者：染NM