イラストSS

「……わぁ！」
　甘いチョコレートの香りが漂うキッチン。完成を目前にしたケーキを目前に、ステファンの声が漏れる。
　エメラルドの瞳はぱぁっと見開かれ、きらきらと輝いていて。
（おいしそう、早く食べたい……）
「だめ、もう少し我慢よ？」
「た、食べないよ！？」
　隣に立つ真白の少女――ヴァイスには心の声を聴く力があったのだろうか、と慌てて顔を見れば、ヴァイスは至極楽しげに「顔に書いてあるわ」と笑う。この少女――本当はずっと年上らしいが、少女にしか見えない彼女にはいつだって敵わない。
「上手く描けたわね、これ」
　つ、とヴァイスが指すのは切株を模したケーキ。フォークでラインを引くのは、ステファンの仕事だった。
「私が台無しにしないよう、頑張らないとね？」
　たっぷりのチョコレートクリームを詰めた絞り袋を手に取ると、ヴァイスがゆっくりと切株の表面にクリームを乗せていく。
　ちら、と隣のステファンを見れば――緩んだ口元から今にも涎が垂れそうなものだから、また笑いそうになるのを我慢した。

　クリームを絞ったら、最後に粉砂糖の雪を降らせて。
　そうしたらお湯を沸かして、紅茶を淹れて――二人っきりのパーティーをしましょう！


　＊SS担当者：飯酒盃おさけNM