イラストSS

　凍てつくような月光を映して輝く湖、オデットレイク。
　その畔にひっそりと建つのがクォーツ修道院だ。
　聖なる夜であっても訪れる者のいないほどに忘れ去られた教会で、ステンドグラスが月を受けて、美しい光の模様を床に落としている。

　礼拝堂の一番奥。
　ステンドグラスの光から外れた暗がりに、何かがある。
　教会内の静謐を乱さぬように、リアは静かにそちらに向けて足を進めた。依頼を終えたばかりで、本当ならすぐにでも休みたいところだが、精霊の導きとあらば無視もできない。

　近づくと、それが壁に背を持たせかけた少女なのが見て取れた。
　ひらひらした袖の神秘的な衣装をつけているが、そのあちこちが煤けている。今のリアと同じく、ひと仕事終えてきたかのように。
　生命を感じさせないほどに静かだが、目を凝らすとわずかに胸が動いているのが分かる……。

　リアは少女の前にそっと膝をついた。
　光を避けるように薄闇に眠る少女へと伸ばしかけた手をいったん引き、手袋を外す。直に触れてみたい、そう思ったのだ。

　ステンドグラスごしの光が恩寵のごとく降り注ぎ、リアを浮かび上がらせる。
　光のステージから影のステージへと、リアはゆっくりと手を差し伸べた――。


　＊SS担当者：月舘ゆき乃GM