イラスト詳細
イルミネーション輝く街から外れて
イルミネーション輝く街から外れて
イラストSS
キス。
王子様がお姫様を目覚めさせるもの。
結ばれた恋人達の約束。
魔法を解く鍵。
キスが物語の中に描かれた空想なんかじゃないと……天之 雪(p3p008857)は時に気づいてしまった。
カムイグラを出て、幻想の華やかな大通りをゆく。
雪の降るシャイネンナハトの夜を歩くには雪の普段の服装は薄すぎる。
このために買ったもこもこファーのついた服を着て、ちょっと余った袖を指でくいくいとやる。
横を歩く朱雀・アスター(p3p009179)の顔をちらりと見た。
いつもとシルエットこそ代わらないものの、洋服とマフラーで新鮮なコーディネートで固められていた。
チェック柄のマフラーに指をかけ、ちらりと見合えしてくる朱雀。
視線が交わされる一瞬、雪はサッと下を向いた。
それまで剣の稽古をつけていた、弟子だと思っていた男性。朱雀から向けられたのは身を貫くほどまっすぐな『愛』だった。
朱雀からすれば、これまで幾度もアプローチをかけていたにも関わらず鈍さの極みを見せていた雪への最終手段である。
「えっ、あっ、私……その、こういうの初めて、なので……」
まごつく雪。僅かにでも離れようとする彼女を、朱雀は手放したくなかった。
どこへも行って欲しくない。
目をそらして欲しくない。
いや。
「俺を見ろ」
壁に手を突き、マフラーを外す。
「もし嫌なら、突き飛ばしてくれても構わない。俺からのクリスマスプレゼント、受け取って……くれるか?」
「プレ、ゼント……」
近づく唇。
雪は――。
答えはもう、決まっていた。
※担当GM『黒筆墨汁』