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涙石
涙石
イラストSS
サンタローザの船内ラウンジのテーブルで二人はグラスを鳴らした。
ピアノの生演奏がゆったりとした音色を奏でる。
先ほどよりも近くに寄り添えば、吐息が聞こえてきそう。
少し手を伸ばせば、廻の唇に指先が触れた。不思議そうに覗き込む廻の首筋には歯形が残っている。
寒月の夜に愛無が刻んだ執着の証。消えて欲しく無いもの。鏡を見る度、消えゆく色に切なくなる。
「愛無さんは、元の姿が嫌いですか?」
「どうしてかな?」
アメジストの瞳が廻を見つめる。
「さっき、人間になれたらって言ってたじゃないですか。元の姿が障害になるって。
でも、僕は愛無さんがどんな姿だって好きですから」
「そうか。ふふ、嬉しいね」
ラズベリーのカクテルを揺らし愛無は儚く笑う。
「ねえ、愛無さん。僕からのシャイネンナハトのプレゼント受け取ってくれませんか?」
照れた様に微笑む廻に、愛無も悪戯な笑みを浮かべた。
「おやおや。嬉しいね。僕からもあるんだよ。交換しようか」
愛無が廻の手の中に開いたのはティアドロップ型のユーディアライトのペンダント。
廻が差し出した包みを開けば――
紫ノ雫
ティアドロップ型のアメジストのペンダント。二人の瞳と同じ色。邪悪なものから身を守る御守の石。迷わず帰って来られるように。廻から愛無へのシャイネンナハトのプレゼント。
※担当GM『もみじ』