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ふたりだけのダンスパーティ
ふたりだけのダンスパーティ
イラストSS
●ふたりだけのダンスパーティ
煌びやかなステンドグラスに、豪奢なシャンデリア、揺らめく燭台に、刻を告げる大きな時計。今日だけの為に飾られた天幕などが、マルベートとティアを祝福していた。
「ティア、王子様みたい」
「それは光栄です」
黒いタキシードに身を包んだティアは、マルベートをリードするようにゆるりゆらゆら、左右に揺れて。音楽は無い。此処には二人きりだから、オーケストラですらも彼女らの間に踏み込むことは出来ないのだ。
リードされるのを楽しむ用に、穏やかな視線でマルベートはティアの紅と蒼の瞳を見つめる。お互い容は違えど黒き翼を広げ、悠々とこの時間を楽しんだ。マルベートの純白の衣だけが異質であるように、漆黒の二人は刻を忘れて踊る、廻る。
「どうですか、楽しめていますか?」
「ええ、とても!」
音は無くとも二人の心にはワルツが響いている。鼓動を打つ三拍子がティアとマルベートのステップとなり、ティアの長い髪が合わせて揺れた。嗚呼、この赤がとても可愛らしいと思ってしまうなんて……マルベートはくすりと笑みを零す。
「マルベート?」
「ふふ、なんでもないよ」
魔法の時間が解けるまで、もう少しこのままで――。
*SS担当者:まなづる牡丹NM