イラスト詳細
裏路地にて、カップルを見張る者
裏路地にて、カップルを見張る者
イラストSS
冷たい夜でした。
寒い、暗い、喧騒から切り離されたような、夜でした。
いいえ、そこを選んだのは、彼ら自身。
「なぁ……いい、だろぉ……?」
「ん、ふふ……だぁめー」
人気の無い路地裏。人の多い大通りから少しずつ逃れつつ、男は女の腰に手を回し、進む先を誘導します。
ゆっくり、ゆっくりと。形だけの抵抗すらも、楽しむためのスパイスとして。
「きゃ」
そうして、狭い路地の壁に追い詰められた女は、笑みの形に口を歪ませ、近づいてくる男の唇と重な──。
「……?」
らなかった。
異音が聞こえたからだ。
「ねぇ、変な音、した……?」
こつん。ぢゃらら。
こつん。ぢゃらら。
と、固いもの同士のぶつかる様な。
鎖が擦れ合う様な。
規則正しい音が……それも、どんどん大きくなって、それは近付いて来ているのだと、そういう想像が浮かんだ事でしょう。
「はは、そんなまさか、っ!?」
そうして、急に感じた寒気に二人、路地の向こうへ顔を向ければ。
「…………メェェェェリィ、クゥリスマァァアアアッス」
「うわああああああ!?」
クリスマスは、節度とTPOを弁えなければならない。
でなければ、ハンマーを振り乱す12本足のイカが、そう。
あなたの後ろに。
※担当『ユズキ』