イラスト詳細
シラスの湊みなとによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
シラスの湊みなとによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
イラストSS
しんしんと降り積もる雪の中、赤い唐傘を差して歩むのは一人の男であった。戦場にその身を置きながら粧う事を忘れぬその姿は絶世の美女をも思わせる。
歩むたびに結い紐が音を立て、戦士にしては余りに豪奢すぎるチャイナドレスに雪が絡む。
さくりと足を進めたその一歩の前に、姿を見せたのは黒髪の少年。その唇からは白が漏れ出し、寒々しい空の下だというのに、彼は雪を避ける事もしない。
「待ってたぜ――」
低く、少年は唸るような声を発した。こうして闘士が何者かに待ち構えられるのはラド・バウでは日常茶飯事だ。それは男――ビッツ・ビネガーにとってもそうだろう。尤も、彼は懼れる程の残虐さをその胸に宿している為、それ程までにこうした経験はないのかもしれないが。
「ビッツ・ビネガー!」
「あら、子犬ちゃんじゃない。熱烈ねェ」
じっとりと絡むような声音を発して、微笑んで見せたビッツにシラスは唇を噛み締めた。拳を固めて、一気に距離を詰めるというわけではない。そんな中途半端な動きなど彼には見切られる。
ならば『ビッツ・ビネガーが整えたフィールドで、彼と向き合うしかないのだ』。
「――いいわよ?」
男は、誘うように手を拱いた。その合図を受け、雪の中、シラスは一歩踏み出すのだった。
※担当GM『夏あかね』