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マルベート・トゥールーズのおしかつによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
マルベート・トゥールーズのおしかつによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
イラストSS
時計が厳かに鳴り響く頃、夜気の水は静かに姿を変えた。
庭に揺蕩う黒睡蓮に触れた最初の白雪は、溶けるように消えていく。
石灰色に浮かぶ窓格子の中を手燭の炎が横切った。
とろとろとしたオレンジの灯が消え、華奢な灰煙が暗闇に薄線を引く。
軋む寝台、衣擦れの音。少女の柔肌を温もりが包みこむ。
湯浴みの名残か。頬や髪を擽る指は少女と同じ香りを纏っている。
「今日は楽しかったかい?」
夜啼鳥よりも穏やかに声は尋ねた。
満ちた腹はまだ暖かく、清潔な寝床は真綿の優しさで少女を包んでいる。
肯定するようにミレニアは首を動かした。
黒睡蓮の館。その主人、悪魔マルベート・トゥールーズは額にかかった愛し子の髪を優しく払いのけた。
「ほら、やけに寒いと思ったら雪だ」
慈母の笑みを含んだ悪魔は、窓の外の雪花を楽しげに見上げる。その横顔は絞首台の縄を眺める時と同じものだ。
温もりを分け与えるようにマルベートの白い腿がミレニアの足を包む。
「少しは暖かくなったかな」
クスクスと聞こえる声は甘い微睡みに浸った耳に心地良い。マルベートの胸に白い繭は頬をすり寄せた。
おやすみなさい。おやすみなさい。
輝かんばかりの、この夜に。
訪れた蜜夢は深い藍夜に沈んでいく。
※担当『駒米』