イラストSS

　聖夜という事もあり、いつも以上に往来の激しい大通り。アレクシアは大時計の下で珠緒の買い物が終わるのを待っていた。
　まだまだ世俗に疎い珠緒のために良さそうな店をチョイスした……まではよかったが、「どれにしましょう、何を買いましょう」と悩み始めて約十分。彼女に気を回したアレクシアは、外で彼女の戻りを待つ。
　待つこと追加で十分。買い物を終えた珠緒に、アレクシアは大きく手を振った。とてとてと歩み寄ってくる珠緒の手には、ワインレッドの紙袋。
　珠緒はそれを、アレクシアの手に握らせた。
「選んでいたら遅くなってしまいました。珠緒からの、ぷれぜんとです」
「え、ええ！？」
　そんな展開になると思わず素っ頓狂な声を出すアレクシア。断って中身を開けてみると、中には紫色のストールが。
　巻いてみると、ふわふわして暖かい。
「大切にするね！　ありがと！」
　その言葉に、珠緒も満面の笑顔を浮かべた。

「じゃあ、次のお店に行こうっか！」
　そう言って、アレクシアは珠緒の手をぎゅっと握る。その手はとても力強い。
——この手は珠緒をどこへ連れて行ってくれるのでしょう。
　まだ見ぬ未知への高揚か、それとも団欒の一時を過ごす楽しみか。どっちにしても珠緒の心はゴム鞠の如く期待に弾み、まだまだ収まりそうにないのだ。

※担当『澪』