イラストSS

「シャイネンナハトのお伽話って聞いたことある？」
　炎堂 焔が手を引きながら肩越しに振り返る。彼女に連れられていたフレイムタンは首を振った。
「軽く、と言った程度だな」
　聞き齧った程というフレイムタンに、焔はお伽話を聞かせて空を仰ぐ。
「──だから、この夜は流れ星がいっぱい落ちるんだって。フレイムタンくんも今夜のうちに何か願い事をしておくと良いかも！」
「願い、か。考えておこう。……今はどこへ向かっているんだ？」
　ふと疑問に思った彼だが、焔は悪戯っぽく笑って内緒だと告げる。そのまま彼女に着いて行くと、露天のある通りへ入った。
「あ！　ここはね、この時期だけに出る露天なんだ！　一緒に見て行かない？」
　誘いの言葉をかける焔の瞳は『見たい』と言わんばかりにキラキラと煌めいていて。それに小さく笑ったフレイムタンは頷く。
　揃いの小物を探してみたり、寒い中で熱々のスープを飲んだり。露天でたっぷり過ごして、2人はさらに先へ進む。
「……この辺りかな？　フレイムタンくん見て、後ろ」
「これは……」
　これまで通ってきた道を、飾られたイルミネーションを一望できる場所。その美しさにフレイムタンは息を飲む。
「……綺麗だな」
「うん。フレイムタンくんにもね、見て欲しかったんだ」
　だって──ここは去年、自分も綺麗だと思った場所だったから。

※担当『愁』