PandoraPartyProject

イラスト詳細

薔薇と棘

作者 ロロ
人物 ヨハンナ=ベルンシュタイン
イラスト種別 シングルピンナップクリスマス2019(サイズアップ)
納品日 2019年12月24日

14  

イラストSS

 復讐という事象に心地よさなど無かった。

 憎悪が増す度に痛みが走った。前に進む度に茨が締め付けた。
 禁術を求めた時、より身体が『溶けた』気がした。
 ――己が半身を失ったのに。
 もう半分も自ら呪いに染め上げて。
 ヒトを止め。
 吸血鬼へと身を堕とし。
 血飛沫の跡を振り返らずに、前へと進んだ。

 自分がもうどこに立っているかも分からないのに。
 深く深く茨の蔦が絡んできているのに。
 半身を奪った『影』がこの先にいるのだからと、見えぬ闇の先だけ求めて。

 ……邪魔な悪は喰らった。
 喰らって、喰らって、喰らいつくして。身体どころか全てが紅に塗れて。
 体内に残って――いたかも知らぬが。
 内に流れていた人の血すら啜った何かの混じりの果てに、もはや何ぞと知れぬ。
 肉を捨て血を捨てて、流して流れたこの身は。

 まごう事なき吸血鬼なのだろう。

「――――」

 肺に流れ込む冷気が彼女の意識を虚ろに戻す。
 時折。
 時折、あのような薔薇を見る。
 何故なのか。もはや復讐の総ては果たし、世界すら『変わった』というのに。
 未だ囚われるその最中。

 ――窓が開いていた。
 風か、鍵が外れたか。
 首筋を撫ぜる冷たき風が、ああ。

 思い出させるのだ。
 俺の半身を奪ったのは。

 こんな――寒い夜の事だったと。

※担当『茶零四』

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