イラストSS

●聖夜の夢想

　夜も更け、聖夜を飲み明かす者達で騒がしくなる勇者達の拠点、ローレット。
　うってかわって、これから配られるであろうプレゼント箱が静かに並べられていたその一角は騒がしさとは無縁の地となっていた。
　羊毛の絨毯の上に静かに眠るリリーとカルア。その指にクリスマスツリーの飾りがかけられている処を見るに、飾り付けの最中、暖炉の赤に誘われた眠気に呑まれてしまったのであろう。
　尻尾を揺さぶってカルアを起こそうとするも、彼女の寝息に当てられ一緒に眠ってしまったリリー。
　自らの豊満な体故か、何かの上で眠る感覚に慣れていないのか、時折むずかゆそうに動くカルア。

　時折、ぱちぱちと暖炉の火の粉が弾ける音が、その二人の寝息だけが広がる室内へと広がっていく。
「むにゃ――」
　どちらの声であろうか。火の音に混ざり、戦いとは無縁の寝言が溢れでる。その声に反応するかの様にカルアの尻尾がゆらりと揺れ、リリーの手から離れると、ゆっくりと胴体の上に覆い被さった。
　まるで、毛布を上からかけるかのように。カルアの重く大きな尾はリリーにとってやや重そうに見受けられたが、リリーの表情はより穏やかに緩み、更に深い眠りへと沈んでいく。
　時だけがゆっくりと流れる静かな空間が、そこにあった。

　※担当GM『塩魔法使い』