イラストSS

　輝かんばかりのこの夜に――シャイネン・ナハトというならばパーティーがお決まりだ。
　だからこそパーティーの準備には余念はない。
　けれど、パーティーの準備にはすこしばかり『不思議』な気配。
　メイド服――なぜか男性までもがメイド服だが、其処に口出しするのは野暮であろう――に身を包み、パーティーの準備を始めたBrigaはリースを窓辺に飾り位置を調整している。
　リースに連なるは銀の飾り。煌びやかに窓の外の光を反射し、キラキラとその輝きを返している。
　位置を調節し、くるりと振り仰いでみればリースは見事にその部屋を飾り立てる。
　赤いカーテンに映える緑は美しく、シャイネン・ナハトを彩った。
「えーと……飾りはこの辺でいいですか？」
　トナカイの角に赤鼻を飾って、椅子に腰かけてツリーを飾り付けるラクリマに「いいナ」とBrigaは一言返す。
　大きいツリーはラクリマの身長程度あるだろうか。細かな細工を並べ立て、お決まりの飾りを並べれば、それだけでちょっとしたシャイネン・ナハト気分が味わえた。
「どうでしょうか！」
　得意げなラクリマにゆるゆると頷くヨタカ。
「ああ……、いいな……―――あっ」
「あらぁ！　シャンパンが零れちゃいそうじゃなぁい！」
　ラクリマへ笑みを見せたヨタカの手元からシャンパングラスが零れ落ちる。ロングスカートをひらりと揺らしたヨタカへと走り寄るアーリアが「危ない」と「勿体ない」が混じったような声音で慌てているが――どうやら彼女の酒（パーティー）は開始している様だ。
「うふふ、大丈夫そうねぇ。ああ、けどちょっと零れちゃったかしらぁ？」
「……ああ……危なかった……」
　慌てた調子であったヨタカとアーリアの様子を見て居たラクリマとBrigaがほっと息を付く。
　お酒の事になればアーリアは信頼できる。大事なシャンパンは見事守り切られた。
　その傍らでピザにローストチキンと料理の並んだテーブルにこっそり腰かけていたオウルニィトがあーんと口を開く。
「ああ……おいしいですぅ～……」
　こっそり、こっそりと。ブッシュ・ド・ノエルをつまみ食いして。
　誰も気付かないうちにブッシュ・ド・ノエルの消費が進んでいく。
　静かに――そう、誰も気付いてはいないのだ。ゆっくり、ゆっくりと。
　テーブルの上から消えていく『メインディッシュ』に気付いた頃にはきっとちょっぴり欠けたブッシュドノエルが困った様に鎮座しているのだろう。
　混沌のパーティー開催まではまだまだかかりそうだ……。

　※担当GM『日下部あやめ』