イラスト詳細
アベルの旭ゆうやによる3人ピンナップクリスマス2018(横)
イラストSS
「シャイネンナハトは『良い子』のイベントなんだよね。だから路地裏に連れ込んで女の子を無理矢理やっちゃおうとか、そんな『悪い子』はいちゃいけないんだって」
夜目にも鮮やかな薄紅色の髪の少女・ラビィ(p3p003672)は、己を壁に押しつける男達を見上げて諭すように言った。
その身に纏う縁に白いファーの付いた赤いボレロ付きのワンピースは、サンタ服と呼ばれる伝統衣装。
しかしミニ丈から伸びた細い脚はニーソックスにより腿の一部だけ肌を晒し、幼さと艶めかしさの鬩ぎ合う領域となっていた。
「ほら、来ちゃった」
ラビィの呟きは一発の銃声と骨を砕く斬撃の連打とに掻き消され、男達が聞くことはなかった。
それは黒いサンタ服を来た若い男女。
しなやかな筋肉をサンタ服の下に、甘い顔立ちをガスマスクの下に隠した鉄騎種の青年・アベル(p3p003719)の手には防火斧があり、一つ振るう事に肩を砕き、脚を砕き、背骨を砕き、そして最後に頭ごと悪を打ち砕く。
アベルの中の怒りは正義を実行する毎に罪を重ねたが、煉獄の炎となったそれを消すことなど出来はしない。
例えその道行きが地獄へと続いていても。
長い白髪を無造作に下ろしたジェック(p3p004755)は、銃口から硝煙を流す拳銃を静かに下ろすと血飛沫上げて頽れた男をブーツの爪先で裏返して死亡を確認する。
顔を覆うガスマスクは囚人に課す拘束具のように外すことも許されず、匂い立つ紅梅色の瞳を見せることもない。
ジェックは肩に担いだ継ぎ接ぎだらけのドサ袋を赤く汚れた地に下ろすと、雪降る天を見上げた。
ガスマスクを被った顔面に白い雪が灰のように降り注ぐ。
「そう言えば雪が降った後は空気がキレイなんだってネー」
灰降る汚れきった異世界の感傷はガスマスクの下。
ラヴィもまたアベルからガスマスクを受け取るとゴミ箱の上に座り、この奇妙な仮面が繋いだ縁を思う。
奇しくもこのガスマスクが、父を失い一人になった自分を二人と結びつけてくれたのだと。
「おっと、新たなお客さんですか? アンタは『良い子』のまま大人になったようですが‥‥何も見ていない。いいですね?」
アベルは防火斧を担ぐと怒りの炎を向けることなく、穏やかに優しく、だけどしっかりと目撃者に言い聞かせる。
黒いサンタの存在は伝説のまま、真実を知る者は誰もいないはずなのだから。
※担当GM『八島礼』