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待ち惚けの館

記憶と記録

何でだろうな、時々過去を思い出すことがあるんだ。

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【暗殺者(アサシン)の面影①】

 アルヴィとニーアの姉弟が共に両親の下を離れて暫くの刻が過ぎた頃の話だ。
 相も変わらず二人は実家からずっとずっと遠くの森奥にある、風が吹けば壁が軋み、雨が降れば雨漏りしてしまうようなおんぼろの小屋で暮らしていた。
 時々両親が仕送りを送ってくれることもあったが、切り詰めて切り詰めて、それでも一日一食とまともに食べれない生活が続いていたことは言うまでもない。
 ……今思ってみれば、状況は本人が思っていたよりずっと酷く、どうにもならないものだっただろう。
「お姉ちゃん、あのね――」
「大丈夫よ、アルヴィが食べなさい?」
 ほんの僅かな仕送りと二人で採ってきた山菜の殆どを自分に与え、日に日に痩せ細っていく姉の姿にアルヴィは気付かないフリをしていた。ニーアだって自分の弟がそこまで馬鹿じゃないことを知っていただろうが、可愛い弟に出来るだけひもじい思いはさせまいと気付かないフリを“させていた”のだ。

 そんな日々が続くある時、アルヴィは一人で森の奥へ山菜摘みに走り出した。
 まだ太陽も昇りきらない朝方頃だ。いつもなら隣で手を握ってくれる姉は遅くまで狩りを続けた疲労もあって小屋の中でぐっすり眠っている。いつもなら傍らで静かに寝ている弟がこんな朝方にこっそり抜け出すなんて夢にも思わないだろう。
「今日だけは、僕一人で沢山持ち帰るんだ……」
 いつも姉の言うことを素直に聞くアルヴィがこんな行動をするには確かな理由があった。
 それはその日が、きっと忙しない日々で本人すら忘れているだろう姉の誕生日だったからだ。

 森の奥を進むアルヴィは、“そういう時”に限っていつもの道を通っていかなかった。
 生きるために毎日山菜摘みをしていたわけだから、いつもの道を歩いても大した量の山菜は採れないだろうし、別の場所を探せばもっと美味しい山菜を採取できると考えたのだ。
 そして、彼の考えは確かに正しかった。
「キノコだ……っ!!」
 ふと足下に伸びた木の根に視線を落せば、いつも採っているものよりひと回りもふた回りも大きなキノコがいくつも目に入った。
 美味しいキノコを早く食べたいと鳴き喚くお腹の虫をぐっと黙らせると、彼は無我夢中でキノコを篭に入れ始める。

 でも……この時アルヴィはまだ知らなかった。
 こんなに沢山採れるのに、どうしてニーアがここで採取を行わなかったのか。
 ――その理由を。

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