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ロリババア牧場株式会社
1/3(長文のため分割)
ーーーーここから読み飛ばそうーーーー
どこかで波の歌が聴こえる。
窓の硝子を雨粒が叩く。しめやかな調子を取りながら、雨は次第に強くなっていく。
あなたは少しだけ目蓋を持ち上げた。窓の外は真っ暗だ。あなたはもう一度、雨音とともに心地よい眠りに包まれようと目を閉じた、その瞬間。
「あらやだ、せっかく来たのに」
突然のしゃがれ声に驚き、不気味な声のする方へ視線を向ける。そうしてようやく、あなたは闇深い部屋の窓から何者かがこちらを覗き込んでいることに気がついた。
よくよく見ると、それはロバであった。前髪を顔にはりつかせ、ずぶ濡れになりながら、老ロバはおかしげな様子で目を細め、どこか慣れたような蹄さばきで器用に窓をこじ開けると、首を突っ込んだ。
「無施錠とは無用心ね」
それはにたり、と笑った。
「ロリババアです。その子の祖母か、母親か、はたまたどこか遠い血筋のものか。おげんきでしたか。わたしは今日もげんきです。さいきん、発音がうまくなりました」
あなたは、寝所に寄り添い眠るあなたのロバに目をやった。窓辺の老ロバによく似た、あなたの家畜が小さく寝息を立てている。ほら来たぞ、と眠るロリババアに足で合図を送れば、それを見た老ロバが眉をひそめる。
「まあ、その子は起こしちゃだめよ。わたしはゆめの存在であるべきだわ」
ロバは続ける。
「あら、ロバは喋らない、ですって? 知らないわ、あなたの中の常識なんか。それより中に入れて頂戴」
あなたは眉間に皺を寄せながらも、そのロバの言葉に従ってむくりと起き上がり、庭口へ向かうと戸を少しばかり開いた。
すぐさま、奇妙なロバが扉の隙間から強引に顔をねじ込ませてきた。それは歪に口角を上げる。開かれた戸の先から運ばれた、雨の匂いが鼻の奥でじんわりと広がった。
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どこかで波の歌が聴こえる。
窓の硝子を雨粒が叩く。しめやかな調子を取りながら、雨は次第に強くなっていく。
あなたは少しだけ目蓋を持ち上げた。窓の外は真っ暗だ。あなたはもう一度、雨音とともに心地よい眠りに包まれようと目を閉じた、その瞬間。
「あらやだ、せっかく来たのに」
突然のしゃがれ声に驚き、不気味な声のする方へ視線を向ける。そうしてようやく、あなたは闇深い部屋の窓から何者かがこちらを覗き込んでいることに気がついた。
よくよく見ると、それはロバであった。前髪を顔にはりつかせ、ずぶ濡れになりながら、老ロバはおかしげな様子で目を細め、どこか慣れたような蹄さばきで器用に窓をこじ開けると、首を突っ込んだ。
「無施錠とは無用心ね」
それはにたり、と笑った。
「ロリババアです。その子の祖母か、母親か、はたまたどこか遠い血筋のものか。おげんきでしたか。わたしは今日もげんきです。さいきん、発音がうまくなりました」
あなたは、寝所に寄り添い眠るあなたのロバに目をやった。窓辺の老ロバによく似た、あなたの家畜が小さく寝息を立てている。ほら来たぞ、と眠るロリババアに足で合図を送れば、それを見た老ロバが眉をひそめる。
「まあ、その子は起こしちゃだめよ。わたしはゆめの存在であるべきだわ」
ロバは続ける。
「あら、ロバは喋らない、ですって? 知らないわ、あなたの中の常識なんか。それより中に入れて頂戴」
あなたは眉間に皺を寄せながらも、そのロバの言葉に従ってむくりと起き上がり、庭口へ向かうと戸を少しばかり開いた。
すぐさま、奇妙なロバが扉の隙間から強引に顔をねじ込ませてきた。それは歪に口角を上げる。開かれた戸の先から運ばれた、雨の匂いが鼻の奥でじんわりと広がった。
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