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【元世界と種族に関する資料】
勇者のいない魔王が支配する魔界。
ここで呼ばれるカオスシード、人間は食い尽くされ
魔族が弱肉強食の上位に君臨していた。
魔族にも多数種類があり、それは細かく分別するには間に合わない程。

中でもルツの種族『竜族』は特殊な肉を主食としている為
不老不死を手に入れ、魔王族として君臨している。
体色は黒に近いほど力が強い。ルツはまさに一族一の逸材だった。
【ルツに関する資料】
王族の生まれで礼儀やマナーに重きを置く。
黒竜だと判断された幼い頃から次期魔王として教育され
そんな毎日に嫌気がさしていた。

いざ魔王になってみても、空っぽの心は満たされない。
そんな時、とあるパーティでその世界で初めての甘味が出た際
この世のものとは思えぬ衝撃を受けたようで
それ以来隠れては食べていた様子。
そのお供は紅茶のアールグレイであった。

彼は異世界について興味津々だった。
部下からするとそれは新たな世界の侵略か?と期待させる行動だったが
そんな事は全く頭になく、ただ純粋に羨ましがる日々。
こんな平和な世界が本当にあるんだろうか?
自分の世界ではありえない世界観に出会っては
憂鬱なため息を漏らしていた。



彼は魔界では珍しい平和主義者だった。
部下達の殆どはその事に気づいていないが
使用人や彼に近い者はそれに気づいては教育する。
「あなたは魔王なのだから」
「魔王であるあなたがそうでは部下達に示しがつきません!」
そんな言葉が飛び交う。
彼は魔王と言う座を捨てたくて仕方なかった。

百年毎に一応勇者と呼ばれる者は現れる。
彼等を前にしてルツは素の状態、武装状態、巨大な竜になって戦う。
ラスボスにありがちな段階戦闘。
だがここでの勇者は脆く、竜になる頃にはワンパンの状態。
彼等が「かんすと」してもその状態になる。
彼らにとって「負けイベ」にも等しい力の差。
ルツもまたそんな差にまた嫌気がさす。

「ちーと」じゃない世界にいきたい
皆と「びょーどー」な世界が良い。
本の中にある世界が本当にあるのなら、連れて行ってくれ。

そう念じた後
彼は強い光に包まれた。
【元の世界にあった紅茶に関する資料】

◆アールグレイ
この世界と同じ「アールグレイ」の事。
ベルガモットの香料をつけた紅茶の事で、アイスティによく合う。
この世界での価値観は一般的に流通し、手軽な飲み物。
モルティーに手が届かない人々はアールグレイを用いて
チャイやミルクティを楽しんでいる様子。
近年ベルガモットが高騰し始めている傾向があり
あと数百年で高級茶になってしまうと懸念する者もいる。

◆モルティー
この世界で言う「アッサム」の事。
濃い味わいで甘みがある茶葉。チャイやミルクティによく合う。
アッサムと違うところはこの世界での価値観。
この世界でのモルティーは最高級茶葉と呼ばれている。
更にはチャイやミルクティに使用されるシナモンやミルクも高級な為
「貴族の飲み物」として一般的に周知されている。
モルティー自体もアッサムの上位互換のようなもので濃い味わいに上品な甘さ。
ルツは百年ほど飲み続けていた事もあったが
国民の貧困率上昇を気にかけ、それから出さないようにと言いつけている。
【元の世界の魔王という存在】
彼がいた世界の魔王は力を持ってるようで持っていない。
何故なら魔王の言動は『元老院』による呪いによって
彼等に制限をかけられていた為である。

『元老院』は全部で7名おり魔王の言動を監視する者。
主に『魔王らしくない行動』を取らせない為の存在。
その為、魔王が『国民と歩み寄りたい』
『その者の名を呼びたい』等と言った善良な願いは
一々会議を開いてまで捩じ伏せてきた。
『魔王は魔王らしく』『この悪の世界を保つには必要な事』
魔王はそれが苦痛でならなかったが……。

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