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旋律境界

【日記帳】

リアの私室に置かれている日記帳。
怠惰な彼女の日々の記録。

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 アザレアの公演は素晴らしかった。
 魂を揺さぶる旋律とはまさにあの事なのだろう。
 特に、マエストロは凄い。うまく言葉にできないが、あの人はすごい。
 マエストロとはすべての旋律を束ね操り、その才能次第では、奏者、観客、周囲の全てを自身の創り上げる物語に引き込んでしまう存在である。
 その点において、ダンテさんは完璧だ。彼の指揮する『アザレア』が世界的楽団と呼ばれるのも頷ける。
 ただ、残念なことに途中、あまりよく覚えていないが体調を崩して意識を失ってしまったらしい。
 その点では、伯爵を含め皆には心配を掛けてしまった。
 いずれ、何らかの形でお詫びをしなければならないと思う。

 それにしても、あの楽団とシスターが同じ名前というのには少し運命を感じる。
 もし、機会があったらマエストロの元で勉強させてもらいたいと思う。
 また、マエストロとお会いできるチャンスが来る事を祈っていよう。
 領地運営の真似事をしてから時間が流れるのが早い。
 ドーレやミファーがあたしに気を遣って、院でのあたしの負担を減らしてくれているから代わりにそっちに時間を割く事ができる。
 だから素直に感謝の意を示したのに、何故かドーレは顔を真っ赤にして怒っていた。
 ただ、音色は嬉しそうだったので、まぁいいかと放っておく事にする。
 
 そんな中、ここ最近セキエイの流通路に盗賊が出ているという話を商工会から聞いたので、今回あたしがそれの解決にあたる事にした。
 最近、書類と睨めっこしてばかりだったので、気晴らしに丁度いいと思ったのだ。
 勢いで受けたのでノープランだったが、修道女が一人でフラフラ出歩けば釣れるかと思っていたが、まぁその考え通りあっさり連中釣ることができた。
 そして、なんか連中ごちゃごちゃ五月蠅かったので、とりあえずは殴って黙らせることにした。
 大丈夫、加減はちゃんとしたし。
 最近覚えた腕ひしぎ十字固めってのを試してやったら、変な悲鳴を上げて直ぐに大人しくなった。
 その後、連中の話を聞いてみたら、かつての幻想蜂起で寄る辺を失った人達が身を寄せ合い、やむなく盗賊として生きていくしかできないと嘆いていた。
 彼らの音色はどれも悲しげで嘘を言っているようには思えなかったし、このまま憲兵に突き出すのもどうなんだろうかと、私はつい思った。
 なので私は、彼らを労働力として雇い入れるというのはどうか、提案した。
 彼らはその提案を受け入れてくれたし、丁度、治安維持の為に自警団を結成したかったという話も商工会で出ていたので、丁度いいと思ったのだ。
 ただ、最初は商工会はいい顔をしなかった。
 なので、私が自分の資産で彼らを直接雇うという事にして、更にオクターヴさんが商工会を説得してくれたので、何とか私……と、オクターヴさんが責任をもって管理するという事で、彼らを雇い入れる事への賛同を得た。
 自警団が欲しいとか言っていた癖に、本当に面倒くさい人たちだ。
 盗賊団よりも、こっちの旋律の方が気に食わない。

 ともあれ、元盗賊団改め自警団の彼らの安心したような穏やかな音色が聴けるようになったのはとても嬉しい。
 これから、彼らが自分の力を存分に発揮してくれることを期待している。
 ただ、何故か私の事をお頭だの姉御だの呼ぶのが気に食わないので、そこは後で彼らの身に直接しっかり教え込んでおこうと思う。
 今日、あたしの管轄区に賞金首がやってきたと、自警団の連中から報告を受けた。
 賞金首と聞いて少しびっくりしたが、私が様子を確認しに行った特は、騒ぎを起こす様な様子は見られず、彼の音色は落ち着いていた。
 暴れるつもりがないのなら、私としては別に排除するつもりもない。
 自警団のみんなも、あたしの判断には従ってくれた。
 ただ、オクターヴさんは最初はいい顔をしなかった。
 それでも、あたしの意向をはっきりと伝えると『それがお前さんじゃな』と、困ったように笑いながら折れてくれた。
 心配してくれたオクターヴさんには申し訳ないのだが、私は自分のやり方でどこまで行けるかを試してみたいと思っている。
 ともあれ、もう暫く私も彼の様子を気にかけなければならないだろう。
 今日は色々大変だった。
 ノノ、レミー、ソードが部屋に立て篭もって、朝からバタバタしていたからだ。
 最近構えてやれてなかった甘えん坊のレミーとソードが駄々こねて、ついでにノノが勉強は嫌だと断固抗議きてきた。
 あいつらはたまに我儘を言って暴れるから、いつもの事だと流そうと、あたしも最初は思った。
 ただ、今日は精霊がやけに騒いでいた。
 そのせいなのか分からないが、ざわざわと嫌な予感があたしの中を走ったんだ。
 もし、ノノ達がいつもの「家出」をしたのなら……もしかしたら、本当にそのまま居なくなってしまうんじゃないか。そんな予感があたしの胸を突いてきた。
 そんな事はないだろう、そうは思ったが、なんとなくそのざわめきを無視出来なかったので、しょうがなく、あいつらの要求を飲んで、今日は一日仕事を休んで遊んでやる事にした。
 あたしもここ最近はセキエイにいる事も多く、あまり弟達に構ってあげられなかったと言う事は自覚していたので、これはこれでいい機会だったのだろう。
 今日は仕事を休んで遊んでやると、そう伝えた時の、あいつらが掌を返す様には少し笑ってしまった。
 ただ、やはりあいつらの相手を一日してやるのは流石に疲れる。
 お陰様で、今は頭痛が止まらない。
 こんな事にならないよう、これからは程よくあいつらとも遊んで発散させてやらなければならないだろう。
 頭が痛い。
 
 分かっている。私は正しい、冷静な判断をしたのだと分かっている。
 あそこは、引くべき場面だった。そうするしかなかった。
 だけど、旋律が頭から離れない。
 あんな事態になっても尚、優しく響くアルテミアさんの旋律が。
 親友を救うのだと、立ち向かったシフォリィさんの旋律が。
 いや、分かっている。あの場面では、引くしかなかった。
 でも、アルテミアさんの力になりたいと、そう思っていた私の旋律は、どんな音色だったのだろうか。

 頭が、痛い。
 決行の時は来た。
 霞帝の話だと、あたし達はただ時間を稼げばいいのだという。
 だけど、それだけでは終われない。今回を逃せば、きっと。
 頭は、まだ痛む。だけど、そんな些細な事に躓いている場合じゃない。
 
 私は絶対諦めない。
 必ず、取り戻してみせる。
 カムイグラの戦いが終わった。
 今回の戦いは、色々な愛の形を教えられたものだった。
 特に、アルテミアさんとエルメリアの家族の愛。
 私はそれを間近でずっと見てきた。
 本音をいえば、私はこの結末に納得は出来ていない。
 愛する家族がこんな形で引き裂かれ、永遠に分からなければならないなんて、認められる筈もない。
 愛する家族、エルメリアを失った彼女は、これからどう生きていくのだろうか。
 それを思うと、私も心が騒ついてしまう。
 だが、これが現実であり、私達に出来るのは、ここまでなのであろう。
 果たして、私にクォーツ院の家族を、シキやサンディを、アオイやシオンや友人達を、そしてガブリエル様を守る事が出来るのであろうか。
 もっともっと、強く成長していかなければいけないのだろう。

 家に着いて、家族の顔を見たら、なんだか心の底から安堵した。
 ひとりひとり抱きしめて、みんなの旋律と体温が私を満たしてくれた。
 今回ばかりは、生意気なドーレも最初は抵抗したけどすぐに大人しくなった。
 私は、家族の元に帰ってきたんだ。
 私は、絶対に失いたくない。
 頭はまだ痛む。
 早く体調を戻して、強くなれるように色々頑張らなければ。
 明日も、明後日も、その先も、大切な家族と過ごせる日々を守る為に。
 クォーツ院に戻って、セキエイの仕事をこなして、いつもの日常が戻って来た。
 ただし、カムイグラに関わった辺りから頭痛が酷くなった気がする。
 あの異国の地で様々な音色に触れすぎたのかも知れない。
 これでもクオリアとは十数年の付き合いなので、ある程度の負荷には慣れてきた筈だったが、痛み止めの薬も効きにくい程の長期間に渡る頭痛は久しぶりだ。
 クソみたいな昔を思い出す様で気が滅入ってしまう。



 あの方の音色を聴きたい。
 あの方の音色に包まれたい。
 あの優しく綺麗な音色なら、私の痛みを甘やかに溶かしてくれる。
 お会いしたいです、ガブリエル様。
 貴方の音色な触れたいです。
 私は、カムイグラで何を学んできたのだろうか。
 
 強くなりたい。
 私は大切な人たちを絶対に失いたくない。
 だから、今よりももっともっと強くなりたい。
 久しぶりにガブリエル様からの依頼だったから、気合入れたのに。
 依頼が終わったら、もしかしたらガブリエル様とゆっくりお話しできるかもと思って、
もしかしたらもしかするかもと思って、気合入れていったのに。
 あんな事ある???
 地獄……地獄だわ……。
 あたしはこれからどんな顔してあの方に会えばいいのよ。
 
 それもこれも、あいつのせいよ。
 焔、あいついつか絶対にぶち殺す。
 次にあいつに騙されたら、その時は絶対ぶち殺す。
 今日の昼頃、ドーレやレミー、ファラに囲まれて目が覚めた。
 どうやら、先日ガブリエル様の所で倒れてからクォーツ院に運び込まれ、今までずっと眠っていたらしい。
 一応、大事を取って今日は一日休んでいたが、お医者様に見てもらったところ異常はないとの事だった。
 なので、そこまで重大な病に罹患した訳ではないと思う。
 でも一応、暫くは子供達の言葉に甘えて身体を休めるようにしよう。
 
 それよりも、ガブリエル様は心配しているだろうか。
 もし、ご心配をお掛けしてしまったらとても申し訳ない……のだが、特別気に掛けて頂けるのだとしたら、ちょっと嬉しい気持ちもある。
 というか、ガブリエル様と唇で触れ合ってしまった……。
 最初は何が何だかわからなかったが、真っ直ぐ見つめてくるあの方の瞳に捕らわれて、つい……ついそのまま受け入れてしまった。
 唇に触れて感じたあの方の温度を、今でもしっかり覚えている。
 駄目だ、このことを考えると頭がおかしくなって死にそうになる。
 とりあえずは、気持ちの整理をして、身体をしっかり休めて体調を快復させよう。
 頭痛が収まったら、ガブリエル様にお会いして直接謝罪をしなければ。

 勿論、謝罪しに、だ。
 ご心配をお掛けしただろうから、当然すべきである。
 何故だろうか、最近は頭痛が止まない。
 クォーツ院みんなの音色に包まれているのに、それでも。
 いや、みんなの音色の方こそがひどい頭痛になる。
 旋律は、優しくて暖かいいつもの音なのに、どうして。
 
 ガブリエル様、貴方の旋律を聴きたいです。
 貴方の音色を聴けば、きっと良くなるから。

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