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陽の当たる煉瓦造りアパルトマン

【204号室:真の部屋】

アパルトメントの2階。204号室。真の部屋。
1LDK、風呂・トイレ・洗面所付き。

『【土足厳禁】玄関で靴を脱いでから室内に上がってね。スリッパはあるよ。【犬注意】』の貼り紙が玄関扉に貼ってある。

玄関を入って真っ直ぐ進むと、真が普段、過ごすための部屋だ。寝室兼居間である。

部屋の中は、少し広めの、ゆったりとした間取りであり、アンティーク風の家具や、犬用品、旅の土産と思われる品々や、植物、絵画や本などが、お洒落に品良く置かれている。

日当たりがいい大きな窓には、数枚のブラインドが垂れ下がり、日が出ている間はちょうど良い量の光源を室内に呼び込むことだろう。夜になると、分厚いカーテンが締め切られ、また別の部屋色をみせてくれるだろう。

ここは、世界を旅することが趣味である、日本人男性の部屋である。

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『愛するマリージェンヌ、あなたと一日足りとも離れていることなんてできませんわ。あなたと離れてこの屋敷で過ごす日々は、例えようのない苦痛……例えようのない孤独と寂しさ。あなたと逢えないこの身が怨めしく、あなたともう一度、逢いたいがためにわたくし罪を犯しましたの。……早くあなたがわたくしに逢いに来てくださらなければわたくし、もっと罪を犯してしまいそうで恐ろしい。あゝ、あゝ……わたくしがどのような罪を犯したか、あなたがお知りになったら、わたくし、あなたに嫌われてしまうかもしれませんわ。
 (中略)
 次にあなたに逢える日を、心待ちにしております。ケイト・スターリング』

 (真は手紙を依頼主が指定した封筒に入れ、ランプの火で溶かした封蝋をたらすと、依頼主から借り受けた幻想貴族の家紋が描かれている刻印を押して、ギフトにしまう)


『勇猛なパトリシア! 貴男が亡くなってもうかれこれ十年も経つのねぇ。あたしはすっかり年老いて、もう体も満足に動かせやったらしないから、今年の墓参りごと、貴男へのあたしの最期のお手紙と、あたしのお葬式の手配を、流しの旅人さんに頼んだよ。ーーすごくすごく待ったんだけどねえ……結局、海洋の絶望の海を見に行くと云って旅立っていったバカ息子と孫たちはあたしが死ぬまで、帰ってこなかったよ。
 (中略)
 貴男と過ごした日々はあたしの宝物だ。今度生まれ変わったら……』

 (書き終わったある老婆の遺書を白い封筒に入れて、ギフトにしまう)

『素晴らしきテリージア様の御威光に感謝申し上げる。あなたのように若く美しい幼き老婆の如きお声を聴くことができるこの身にあまる光栄を……』

(さらさらさら、さらさらさら……)

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