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足女の居る宿

銀砂通り・喫茶店

かつて銀の取引でにぎわっていた通りの一角。古本屋と軽食屋が並ぶ中にその店はあった。
扉は飴色のニスでつやつやして、はめ込まれた色ガラスの向こうでは気難しそうなマスターがグラスを磨いている。
扉を開ければ染みついたコーヒーの香りが出迎えるだろう。

しかし、この店の名物はコーヒーではない。
マスターが気難しく、偏屈であるがゆえに極めた製菓技術、その粋、「完全(パルフェ)」の名を冠する甘味こそ、訪れる客の大半が求める品である。

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(指先に触れたのは懐かしい感触。そうだ。知っている。あの夜、あの宿で、ジョセフはここに触れた。礼拝が創造物であると改めて理解し、そんな礼拝を突き放そうとした。が、出来なかった。
今、ジョセフの精神は充実し平穏を保っている。そして、皮膚を、その下にある突起を撫でる指先は好奇心に支配されている。あの時とは何もかも異なっている。)

ああ、そうか。ここだったのか。
これが……口。糧を得て取り込む事に集中した器官としての口か。これはなんとも……興味深いな。そうか。それで君は小食なのだな。

(指先がくるりと皮膚の下にある突起の縁を撫でる。)

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