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足女の居る宿

銀砂通り・喫茶店

かつて銀の取引でにぎわっていた通りの一角。古本屋と軽食屋が並ぶ中にその店はあった。
扉は飴色のニスでつやつやして、はめ込まれた色ガラスの向こうでは気難しそうなマスターがグラスを磨いている。
扉を開ければ染みついたコーヒーの香りが出迎えるだろう。

しかし、この店の名物はコーヒーではない。
マスターが気難しく、偏屈であるがゆえに極めた製菓技術、その粋、「完全(パルフェ)」の名を冠する甘味こそ、訪れる客の大半が求める品である。

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(ジョセフはこそばゆそうに肩をすくめた。それは絡む指のせいか、慣れない穏やかなやり取りのせいか、あるいはその両方か。)

うん。でも、僕は君のように上手く……いや、いや、それを学ぶのも経験か。共有か。
わかった。僕には僕の視界がある。それを君に見せよう。晒そう。もしかしたら、今日のようにうまくはいかないかもしれない。それでも、出来る限り君も楽しむ事が出来るように。

(手を握り合ったまま、ジョセフはゆっくりと迫るように礼拝の方へ上体を傾けた。鏡のような瞳がよりよく見えるように、くろがねの仮面越しの顔を礼拝に近づける。
ジョセフは礼拝を己のやり方で愛したいと思っている。だが駄目だ。そしてなぜ駄目なのかを彼はたった今理解した。それでは一方的だ。共有とは程遠い、と。
礼拝を見つめねばならない。その先により良い「愛」がある。)

私は……これでも工芸や細工に興味がある。それでね、以前面白そうな店を見つけたんだよ。綺麗な石や、見事な金物……。
君が良ければ、是非そこへ。

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