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足女の居る宿

銀砂通り・喫茶店

かつて銀の取引でにぎわっていた通りの一角。古本屋と軽食屋が並ぶ中にその店はあった。
扉は飴色のニスでつやつやして、はめ込まれた色ガラスの向こうでは気難しそうなマスターがグラスを磨いている。
扉を開ければ染みついたコーヒーの香りが出迎えるだろう。

しかし、この店の名物はコーヒーではない。
マスターが気難しく、偏屈であるがゆえに極めた製菓技術、その粋、「完全(パルフェ)」の名を冠する甘味こそ、訪れる客の大半が求める品である。

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(消え切らぬ傷跡に、皮膚の厚みにただただ積み重ねてきた日々を思った。
傷跡が自傷であれ、他傷であれ些細な事だ。そこに自分の関知できぬ出来事があった。自分との間にある歳月の差、それこそが重要で埋めがたい物。
礼拝は絶対的に「経験」というものが少ない。ベースとなった女の心が本能的に「なすべき事」を嗅ぎ分けるが、どうしても軽く浅い。)

素晴らしいのかはわかりません。わたしもまた、どうなってしまうのか分からないのです。
でも、とても楽しい。

(軽くジョセフの手を握る。くろがねの仮面の奥の瞳を見通す様に目を細め、覗き込む)

わかりますか?
街を歩く時に気になるお店を見つけて「ジョセフ様を誘って行ってみよう」と考える瞬間、沢山のしあわせな出来事を想像して勝手に楽しくなってしまうのです。
いいえ、いいえ、朝起きて、いいお天気だっただけで、同じ清々しい空気を共有している気分になって舞い上がってしまう。

貴方の存在が、私を自動的に幸せな気分にさせてくれるのです。

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