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足女の居る宿

銀砂通り・喫茶店

かつて銀の取引でにぎわっていた通りの一角。古本屋と軽食屋が並ぶ中にその店はあった。
扉は飴色のニスでつやつやして、はめ込まれた色ガラスの向こうでは気難しそうなマスターがグラスを磨いている。
扉を開ければ染みついたコーヒーの香りが出迎えるだろう。

しかし、この店の名物はコーヒーではない。
マスターが気難しく、偏屈であるがゆえに極めた製菓技術、その粋、「完全(パルフェ)」の名を冠する甘味こそ、訪れる客の大半が求める品である。

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はい。こちらこそ。一緒に来てくださってありがとうございます。

(一点集中型の彼の事だ。確かにこの店に来ること……否、それ以前に目にも入らなかったかもしれない。
その上で、知る手助けをする。
見たこともないものを触れ、体験した事のないものを体験する。
世界を広げる事だけが、ジョセフ・ハイマンに捧げようと思った礼拝の信義だ。)

……はい?

(しかし、次なる言葉には思わず固まった。
固まらずに居られるだろうか。普通、心臓はあたえるものではない。
いや、しかし、あの異形であるのなら、あの人間を冒涜したような存在であるのならば)

……オラボナ様、が、心臓を。

(いや、驚くべきことは様々にあるが、口から洩れたのは)

……あの方、心臓あったのですね。

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