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足女の居る宿

銀砂通り・喫茶店

かつて銀の取引でにぎわっていた通りの一角。古本屋と軽食屋が並ぶ中にその店はあった。
扉は飴色のニスでつやつやして、はめ込まれた色ガラスの向こうでは気難しそうなマスターがグラスを磨いている。
扉を開ければ染みついたコーヒーの香りが出迎えるだろう。

しかし、この店の名物はコーヒーではない。
マスターが気難しく、偏屈であるがゆえに極めた製菓技術、その粋、「完全(パルフェ)」の名を冠する甘味こそ、訪れる客の大半が求める品である。

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はいっ!

(おいしい、という言葉をジョセフから引き出して弾んだ声を上げた。
職人が作り上げたパフェの手柄なのにまるで自分の手柄のように感じて笑みが一層強くなる。

声から、動作から、ジョセフの戸惑いは感じていたが、恐怖や怒りの気配はない。
それならば、もっともっと喜びを共有する事に注力してもよいと判断した)

まぁ、よろしいのですか?
私、桃も好物ですけれどイチゴも好きなのです。

(差し出されたイチゴパフェにフォークを差し向けると、少し迷ってから珍しい白いイチゴとクリームを攫い、一口。

珍しい一品の味を確かめるようにゆっくりと咀嚼する。
一見未熟な果実のようにも見えるそれは十分に熟した果実と同じく柔らかく――甘い。
イチゴは案外糖度が低い。それ故に甘い物の中であれば酸味が尖る事が多いが、これは違う。桃を食べた時にも感じたが、果実の選別からして店主の拘りが感じられ、嬉しくなる。
きっとこの先もおいしいが詰まっているにちがいない)

ふふっ。

(しらず笑い声が零れる。
ジョセフを見つめる瞳も、パフェを見つめる瞳も同じくらいに甘い)

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