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足女の居る宿

銀砂通り・喫茶店

かつて銀の取引でにぎわっていた通りの一角。古本屋と軽食屋が並ぶ中にその店はあった。
扉は飴色のニスでつやつやして、はめ込まれた色ガラスの向こうでは気難しそうなマスターがグラスを磨いている。
扉を開ければ染みついたコーヒーの香りが出迎えるだろう。

しかし、この店の名物はコーヒーではない。
マスターが気難しく、偏屈であるがゆえに極めた製菓技術、その粋、「完全(パルフェ)」の名を冠する甘味こそ、訪れる客の大半が求める品である。

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ああ……グラオ・コローネの。

(勿体ぶるような、うっとりとした口調で呟く。そうすれば甘い香りと味と、記憶が蘇るかのように。)

ここは混沌。何でも有りの混沌の渦。ふふ……初めは神に見放されたのだと思ったが、今は中々悪くない。いや、これ以上とない幸福。
このように君と…………おや、来たようだ。

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