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足女の居る宿

灯が消えた宿

闇の帳のその向こう。
湿った石畳と酒気と汚濁の匂い。

狂おしい時間が過ぎて夜も眠りに入ったその時間。
灯が消えた宿の鍵が開いている。
扉をくぐれば水の様に張り付く闇の向こうの薄明かり。
その先で、少女のような形をした人形があなたを待ち受けていた。

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あ、愛?

(思わず「何故そこで愛」と言いかけ、慌てて口を噤む。
話の流れとしては理解できなくもない。予想しようとすれば出来ただろう。しかし、出来なかった。
不意を突かれた。それだけではなく、厄介なものを投げ掛けられたものだ。
この質問の答えは慎重にならざるを得ない。己自身を、己の魂を晒すようなものだ。少なくとも、彼にとってはそうなのだ。)

あー、うむ。愛、愛か。
世間一般の定義ではなく、私の愛……ということか。

(仮面に手が伸びる。抑えるのことすら忘れていた。それどころではないのだ。それほどに真剣であった。対峙する礼拝の存在すら、意識から薄れるほどに。
指先を曲面に滑らせる。無数に刻まれた細かな傷のひとつひとつを確かめ数えるように。精神に秩序を齎すために。)

私の愛とは……齎すことだ。
痕を。印を。愉悦を。苦痛を。

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