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足女の居る宿

灯が消えた宿

闇の帳のその向こう。
湿った石畳と酒気と汚濁の匂い。

狂おしい時間が過ぎて夜も眠りに入ったその時間。
灯が消えた宿の鍵が開いている。
扉をくぐれば水の様に張り付く闇の向こうの薄明かり。
その先で、少女のような形をした人形があなたを待ち受けていた。

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ま、あ。それは光栄にございます。
私の如き肉人形。人や魂ほどに輝かしくもないものですが、それに触れてみたいと仰るなんて。

(ぼうっとした表情で固定されることが多い少女であるが、薄明りの向こうで僅かに笑みの気配が濃くなる。
ジョセフが席に座ったのを確認すれば自分もまた、元居た席に戻っていく。
距離を詰めるのは後でいい。今はこのお互いが手を伸ばせば届く程度の距離で)

なにを、お知りになりたいのですか?
この時間にいらっしゃって、まさか、私の「モールド」をご覧になりたいという訳ではございませんでしょう?

(仮面の向こうの様子は知れない。
だが、本来人間の顔であれば瞳がある部分に真っ直ぐ視線を向けて問うた。)

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