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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫への、おさない手紙の話

[すてきな、はぐるまひめさまへ。
いつも、かわいくて、だいすきです。
たんていのおはなしが、とても、おもしろかったです。
あと、おしろで、お人ぎょうとダンスをするのが、
わたしも、ダンスのれんしゅうが、すきなので、すてきだなとおもいました。
おまつりのまほうで、おおきなおんなの子になって、うれしかったですか?
わたしは、小さいお人ぎょうになってみて、おもしろかったけど、たいへんだったので
なぐるまひめさまは、これからも、がんばてください。
ありさ・ちぇすたとん](原文ママ)

《チェスタートン氏の御息女からの、お手紙だ。ファンレターとも言うね!
キミの書いた特異運命座標たちの記事はこんなところにまで影響を及ぼしているということだよ! 凄いじゃないか梔君!》
「……で?」
《返事を貰えないだろうか》
「編集長」
《頼む! 出資者の機嫌を損ねる訳にはいかんのだよ!
梔君、キミならわかってくれるだろう!わかってくれるね!》
「へん」
《頼んだよ!!!》

――――無音となった受話器。
綺麗な花柄の、よれよれの字が綴られた便箋。
それらを暫し死んだ目で見下ろして。

「……私の仕事じゃないでしょう、これ」

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(なんとも正直な歯車の擦れる音に、こちらも楽し気に耳を立てた。)
なぁるほど、お姫様の在り方、ね。……恥ずかしがったりしないのはこっちも有難いわ。
吟遊詩人と並ぶほどの美辞麗句は……
(と、自分の書いた記事を思い返した。)
(『神の手が造り賜いし、繊細なる美貌』『その魂は水晶の如く清らかなる乙女』『然し時には勇敢に魔物を打ち滅ぼし』など、など)……割と、やってた。
そっかぁ……吟遊詩人か、この私が。
ものは言いようねぇ……
(滑るペン先を、目で追う。)

民草のお手紙にいちいちお返事書いてくれるお姫様、なんて、滅多にいないわよ?
だから……貴方が今書いてるそれは、きっと、宝物になっちゃうわね。

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