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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、古い写真と、猫の話

昼を少し回った時刻。
来客の予定があったから、無警戒に扉を開けてしまった。
配達人の差し出す荷物、その宛名に顔を顰めて、
しかし。
受け取らないわけにも、いかなかった。


――――愛弟子、カタリヤ・9・梔へ
君の私物がまだ幾つか残っていたので、送らせて貰う。

僕の名をあちこちで使うのは構わないが
偶には顔を見せてくれないか。
家内も君を恋しがっている。

くれぐれも、無茶はしないように。
君の活躍を波の彼方より祈っている。
――――アキレウス・B・アーケロン


テーブルの上には解かれた荷物と開かれた手紙。
それを片付ける間も無く、二度目のベルが鳴った。

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……ありがとう、カタリヤ。

(かちり。)
(胸の奥の歯車が、噛み合い、嵌まる音。)
(――ああ。これが、「わたし」の名前なのだ!)

わたし。これからも、「はぐるま姫」であり続けるわ。
これもおじいさんがくれた、わたしの大切な意味。大切な名前。

……それから。
はぐるま王国の姫君、リラ。
この世界で与えられた、わたしっていう、いのちの名前。
(何度でも、何度でも口にしたくなります)
(今。ようやく「はぐるま姫」は、皆と同じ、命になれたのだと。)

……やっぱりわたし。カタリヤの紡ぐことばが、大好きだわ。
ありがとう。
「リラ」の名の下に。きっとたくさんの民を、集わせてみせるわ。

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