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梔色特別編纂室

【1:1】幻の夜と、ちいさな娘の話

魔法の夜が訪れるとともに、街に――――混沌全土に、歓声が満ちた。

「編集長、私は……」
「……んもうっ」
無音となった受話器を叩きつける。
――――扮装のひとつもしないと浮くだろう?
三角耳の奥に、冗談めかした軽い声が残響して。

通りにはカボチャのランタンが浮かび
有象無象、魑魅魍魎が笑い合い
猫は、カメラを片手に重い足取りで彷徨いだす。

ゆめまぼろしの夜が、始まった。

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ふふ、今日はお菓子と悪戯の夜なの。刺激的でしょ?
油断は禁物ですよ、「お嬢さん」!
(にまり。笑って、小さな……いつもよりも大きな、暖かくやわらかな手を取る。)

(一年先。人形の枠を外れ、人間へと近づいて。彼女は「何に」なるんだろう。)
(私が見ているのは、もしかしたら……ちいさな私の読んでいたおとぎ話の続き、かも知れない。そんな妄想を自分に許せるくらいには、今の私は、機嫌がいい。)

(手を繋いだまま、魔法の夜を行く。いつの間にかコートの下の尻尾は、とても上機嫌に跳ねていた。)

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