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梔色特別編纂室

【1:1】幻の夜と、ちいさな娘の話

魔法の夜が訪れるとともに、街に――――混沌全土に、歓声が満ちた。

「編集長、私は……」
「……んもうっ」
無音となった受話器を叩きつける。
――――扮装のひとつもしないと浮くだろう?
三角耳の奥に、冗談めかした軽い声が残響して。

通りにはカボチャのランタンが浮かび
有象無象、魑魅魍魎が笑い合い
猫は、カメラを片手に重い足取りで彷徨いだす。

ゆめまぼろしの夜が、始まった。

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きゃっ……もう、カタリヤったら。撮るなら撮ると、言ってちょうだい?
(顔の前に腕をかざして、眩い光を防ごうにも、動作は当然数瞬遅れです。)

……ふふっ。楽しみにしていてちょうだい。
カタリヤが想像できないほど、わたしのこころは成長したのでしょう?
それなら。さらに一年が経つ頃には、きっと。
(友人のみならず、自分でだって、未来のことは想像できないのです)
(何を知るのでしょうか。恋心、狡猾さ。もしかしたら、悪逆さえ)
(歩んできた可能性の路は、まだ無限大の半ばにも差し掛かっていないのです。)

ええ、ええ。お祭りは一人より、二人の方が楽しいもの。
……きっと「この距離」は、今日だけなのだから。
お菓子の味よりも、ずっと、ずうっと。大事に刻みつけさせていただくわ?
(さあ、どうぞこの手を拝借してくださいな)
(繋ぐべき手を差し出して、お姫様……おっと、失礼)
(お嬢さんは、にこりと、何度でも無垢な笑みを浮かべるのでした。)

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