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梔色特別編纂室

【1:1】幻の夜と、ちいさな娘の話

魔法の夜が訪れるとともに、街に――――混沌全土に、歓声が満ちた。

「編集長、私は……」
「……んもうっ」
無音となった受話器を叩きつける。
――――扮装のひとつもしないと浮くだろう?
三角耳の奥に、冗談めかした軽い声が残響して。

通りにはカボチャのランタンが浮かび
有象無象、魑魅魍魎が笑い合い
猫は、カメラを片手に重い足取りで彷徨いだす。

ゆめまぼろしの夜が、始まった。

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……あっ!
(厚く艶を帯びた唇に、蜜色の髪、こちらを見つめる瞳は空の色)
(立っているだけで、こんなに近くに顔があるのは、驚くべき光景ですけれど……)
(でも、どうやったって、見間違えるはずがありません。)

……カタリヤ! わたしよ、わたし!
はぐるま姫よ!
(宝石でないというのに、瞳はこれ以上ないほど、きらきらと輝いて)
(背伸びと共にずいと間近に顔を伸ばして、カタリヤを見つめるのでした。)

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