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梔色特別編纂室

【1:1】幻の夜と、ちいさな娘の話

魔法の夜が訪れるとともに、街に――――混沌全土に、歓声が満ちた。

「編集長、私は……」
「……んもうっ」
無音となった受話器を叩きつける。
――――扮装のひとつもしないと浮くだろう?
三角耳の奥に、冗談めかした軽い声が残響して。

通りにはカボチャのランタンが浮かび
有象無象、魑魅魍魎が笑い合い
猫は、カメラを片手に重い足取りで彷徨いだす。

ゆめまぼろしの夜が、始まった。

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(その歌声は一際、夜の通りに響き渡った。祭りとあって気合の入った詩人か、または、憧れの「詩人の役」を手に入れた何者か、か)
……失礼、道を……お空け下さいますか、マドモアゼル。
(なるべく低く気取った声音で声をかけると、道をふさいでいた小さなネズミたちがきゃあっ、と退いてくれる。なんだかなぁ、と肩を竦めて、歌声の主にカメラを向けた。)

(詩人とやりとりをする少女は、一見ただの普通の、仮装なんてなんにもしていない、町娘。彼女の背中もフレームに入る)
……ん?
(綺麗な声のお嬢さん。何故かその声に聞き覚えがあって、写真を一枚撮ってからカメラを降ろした。)

ね……こほん。もし、そこのお嬢さん?

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