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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、綴られたお話

誰の目も浴びず、誰に聞き耳を立てられることもない
「信頼できる店」を押さえておくのも、記者には必須。

選んだのは上流階級の子女にも人気のレストラン、その奥の小部屋。
白が眩しいエプロン姿のメイドが下がってしまえば
テーブルの上のベルを鳴らすまで、誰もここには来ない。

午後の、お茶会の時間。
ティー・スタンドには小さなケーキやスコーンが並んで
紅茶もミルクも、香りづけのブランデーもたっぷり。

「わざわざお越しいただいて嬉しいわ、姫様。」
蜜色の猫が、三日月のように笑う。
「お話をしましょ、たくさん、ね?」

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たしかに、幻想にはたくさん貴族がいるけれど……。
(王子様談義は、しかし、カタリヤの口から語られた名によって遮られます。)

……そう。ベリナさんのこと、知ってたのね。
(彼女の名を聞くと、お姫様の顔には、わかりやすくも、理解りづらい哀しみの色が浮かびました。)
とても尊敬する人だったそうだし、広い界隈ではないから。
きっと、ベリナさんの顔も知らなかったわたしより……ずっと、悲しい思いをしたと思うわ。
(ミルクが垂らされた紅茶に口をつけるでもなく、ただ、ちいさなスプーンでかき混ぜるばかり。)

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