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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、物言わぬものたちの話

宿屋街の一角。
ぽっかりと開けた小さな広場では、古びたガーゴイル像があたりを睥睨していた。

今はその隣に、蜜色の女がひとり。
苦虫を噛み潰したような顔をしている。

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ふふ!
(お人形をぎゅうと抱きしめたのは実に子供の頃以来の行為で……彼女がそれを感じるかはわからないけれど、結構息苦しいかも知れない)
(……と気付いたので、ちょっと腕を緩めて)
やっぱりはぐるま姫様、貴方とっても、ステキだわ。

(現場の状況が動くにはまだ少しあるだろう。つまり……逃げた男の差し金で、誰かが事件を「なかったこと」にしに来るまで。)
(彼女を抱きかかえたまま、片手で先程取った部屋の鍵をちゃりんと揺らして、)
それじゃ……充分に頼らせて貰うわね?
貴方にも是非覚えて欲しいもの。記者の……「密偵」のお仕事、ってやつをね。
(まず何の話をしようか。観察のしかた?聞き耳の立て方?見咎められたときの上手い言い回し?)
(あれこれと心を躍らせながら、軋む廊下を歩いていく。)

(私達がうまくやりおおせたかは……後日の新聞が語ってくれるだろう。)

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